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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 また産生まるべき夜の夢に、富士山の頂に登って十方を見るに、明らかなること掌の内を見るがごとし。三世明白なり。梵天・帝釈・四大天王等の諸天、ことごとく来下して、「本地自受用報身如来の垂迹・上行菩薩の御身を凡夫地に謙下し給う。御誕生は唯今なり。無熱池の主・阿那婆達多竜王、八功徳水を応に汲み来るべきなり。当に産湯に浴し奉るべし」と諸天に告げたまえり。よって、竜神王、即時に青蓮華を一本荷い来れり。その蓮より清水を出だして、御身を浴し進らせ侍りけり。その余れる水をば四天下に灑ぐに、その潤いを受くる人畜・草木・国土世間、ことごとく金色の光明を放ち、四方の草木、花発き、菓成る。
 男女座を並べて有れども煩悩無く、淤泥の中より出ずれども塵泥に染まず。譬えば、蓮華の泥より出でて泥に染まざるがごとし。人天・竜畜、共に白き蓮を各手に捧げて、日に向かって「今此三界 皆是我有 其中衆生 悉是吾子 唯我一人 能為救護」と唱え奉ると見て驚けば、則ち聖人出生したまえり。「毎自作是念 以何令衆生 得入無上道 速成就仏身」と苦我渧き給う。
 我少し寐みしようなりし時、梵帝等の諸天、一同音に唱えて言わく「善哉、善哉。善日童子、末法教主釈迦仏」と三度唱えて作礼而去し給うと寤に見聞きしなりと、たしかに語り給いしを聞こしめし、「さては、某は日蓮なり」とのたまいしなり。
 聖人重ねて曰う様は、日蓮が弟子檀那等、悲母の物語と思うべからず。即ち金言なり。その故は、予が修行は兼ねて母の霊夢にありけり。日蓮は富士山自然の名号なり。富士は郡名なり。実名をば大日蓮華山と云うなり。我、中道を修行する故に、かくのごとく国をば日本と云い、神をば日神と申し、