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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(086)

念仏者追放宣旨事

 夫れ以んみれば、仏法流布の砌には天下静謐なり、神明仰崇の界には国土豊饒なり。これによって、月氏より日域に覃んで、君王より人民に至るまで、この義改まることなし。職としてしかり。
 ここに後鳥羽院の御宇に、源空法師という者有り。道俗を欺かんが故に専修を興して顕密の教理を破し、男女を誑かさんが故に邪義を構えて仏神の威光を滅す。常に四衆を誘って云わく「浄土三部の外は衆経を棄置すべし。称名一行の外は余行を廃退すべし。いわんや神祇冥道の恭敬においてをや。いわんや孝養・報恩の事善においてをや。これを信ぜざる者は本願を疑うなり」。ここに頑愚の類いは甚深の妙典を軽慢し、無智の族は神明の威徳を蔑如す。なかんずく「止観・遮那の学窓に臨む者は、出離を抑うる癡人なり。三論・法相の稽古を励む者は、菩提を塞ぐ誑人なり」云々。これによって、仏法、日に衰え、迷執、月に増す。
 しかるあいだ、南都北嶺の明徳、奏聞を経て天聴に達するの刻、源空が過咎遁れ難きのあいだ、遠流の宣を蒙り、配所の境に赴き畢わんぬ。その後、門徒なお勅命を憚らずしていよいよ専修を興すこと、ほとんど先代に超えたり。違勅の至り、責めても余り有り。故に、重ねて専修を停廃し、源空の