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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(078)

一昨日御書

 文永8年(ʼ71)9月12日 50歳 平左衛門尉頼綱

 一昨日、見参に罷り入り候の条、悦び入り候。
 そもそも人の世に在るに、誰か後世を思わざらん。仏の世に出ずるは専ら衆生を救わんがためなり。ここに日蓮、比丘と成りしより、かたがた法門を開き、すでに諸仏の本意を覚り、早く出離の大要を得たり。その要は妙法蓮華経これなり。一乗の崇重、三国の繁昌の儀、眼前に流る。誰か疑網を貽さんや。しかるに、専ら正路に背いて、ひとえに邪途を行ず。しかるあいだ、聖人は国を捨て、善神は瞋りを成し、七難並び起こって四海閑かならず。
 方今、世はことごとく関東に帰し、人は皆土風を貴ぶ。なかんずく日蓮、生をこの土に得て、あに吾が国を思わざらんや。よって立正安国論を造って、故最明寺入道殿の御時、宿屋入道をもって見参に入れ畢わんぬ。
 しかるに、近年の間、多日のほど、犬戎は浪を乱し、夷敵は国を伺う。先年勘え申すところ、近日符合せしむるものなり。彼の太公が殷の国に入りしは、西伯の礼による。張良が秦朝を量りしは、漢王の誠を感ずればなり。これ皆、時に当たって賞を得たり。