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ず。「三界は安きことなし、なお火宅のごとし」は如来の教え、「ゆえに諸法は幻のごとく化のごとし」は菩薩の詞なり。寂光の都ならずば、いずくも皆苦なるべし。本覚の栖を離れて、何事か楽しみなるべき。
願わくは、「現世安穏、後生善処」の妙法を持つのみこそ、ただ今生の名聞、後世の弄引なるべけれ。すべからく、心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱え他をも勧めんのみこそ、今生人界の思い出なるべき。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
日蓮 花押
(031)
女人成仏抄
文永2年(ʼ65) 44歳
提婆品に云わく「仏は諸の比丘に告げたまわく『未来世の中に乃至蓮華に化生せん』と」等云々。この提婆品に二箇の諫暁あり。いわゆる、達多の弘経・釈尊の成道を明かし、また文殊の通経・竜女の作仏を説く。されば、この品を長安宮に一品切り留めて、二十七品を世に流布するあいだ、秦の代より梁の代に至るまで七代の間の王は、二十七品の経を講読す。その後、満法師といいし人、この品法
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(030)持妙法華問答抄 | 弘長3年(’63) | 42歳 | |
(031)女人成仏抄 | 文永2年(’65) | 44歳 |