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因縁を知らざるが故に、破仏戒・破国の因縁を成して三悪道に堕つるなり。
問うて曰わく、その証拠いかん。
答えて曰わく、法華経に云わく「仏の方便、宜しきに随って説きたもうところの法を知らず、悪口して顰蹙し、しばしば擯出せられん」。涅槃経に云わく「我涅槃して後、当に百千無量の衆生有って誹謗してこの大涅槃を信ぜざるべし○三乗の人もまたかくのごとく、無上の大涅槃経を憎悪せん」已上。
勝意比丘の喜根菩薩を謗って三悪道に堕ち、尼思仏等の不軽菩薩を打って阿鼻の炎を招くも、皆、大小・権実を弁えざるよりこれ起これり。十悪五逆は、愚者皆罪たることを知るが故に、たやすく破国・破仏法の因縁を成ぜず。故に、仁王経に云わく「その王別えずしてこの語を信聴す」。涅槃経に云わく「もし四重を犯し五逆罪を作り、自ら定めてかくのごとき重事を犯すと知れども、心に初めより怖畏・懺悔無く、あえて発露せず」已上。これらの文のごとくんば、謗法は、自他共に子細を知らざるが故に、重罪を成して国を破し仏法を破するなり。
問うて曰わく、もししからば、この国土において権教をもって人の意を取り、実教を失う者これ有るか、いかん。
答えて曰わく、しかなり。
問うて曰わく、その証拠いかん。
答えて曰わく、法然上人所造等の選択集これなり。今、その文を出だして上の経文に合わせ、その失を露顕せしめん。もし対治を加えば、国土を安穏ならしむべきか。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(025)災難対治抄 | 正元2年(’60)2月 | 39歳 |