2167ページ
は住まわせ給い候わぬ義を立て候わん、いかんがあるべく候らん。詮ずるところ、たとい地頭不法に候わば昵んで候いなんず。いかでか御墓をば捨て進らせ候わんとぞ覚え候。
師を捨つべからずと申す法門を立てながら、たちまちに本師を捨て奉り候わんこと、大方世間の俗難術なく覚え候。かくのごとき子細もいかんがと承りたく候。波木井殿も見参に入り進らせたがらせ給い候。いかんが御計らいわたらせ給い候べき。委細の旨は越後公に申さしめ候い了わんぬ。
もし日興等の心を兼ねて知ろしめすことわたらせ給うべからず、その様、誓状をもって真実智者のほしくわたらせ給い候こと、越後公に申さしめ候い畢わんぬ。波木井殿も同じことにおわしまし候。さればとて、老僧たちの御事を愚かに思い進らせ候ことは、法華経も御知見候え、地頭も申し、某等と申し、ゆめゆめ無きことに候。今も御不審免れ候えば悦び入って候の由、地頭も申され候。某等も存じ候。それにも、さこそ御存知わたらせ給い候らん。
聞こしめして候えば、白地に候ようにて御墓へ御入堂候わんこと、苦しく候わじと覚え候。当時こそ寒気の比にて候えば叶わず候とも、明年二月の末、三月のあわいに、あたみの湯治のついでにはいかんがあるべく候らん。越後房の私の文には苦しからず候。委細に承り候わば、まず力付き候わんと、波木井殿も候なり。
いかにも御文には尽くし難く候いて、しかしながら省略候い畢わんぬ。恐々謹言。
弘安七年甲申十月十八日 僧日興 花押
進上 美作公御房御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(452)美作房御返事 | 美作房 |