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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(452)

美作房御返事

 美作房

 わざと申さしめんと欲し候のところに、この便宜候のあいだ悦び入って候。今年は聖人の御第三年に成らせ給い候いつるに、身労なのめに候わば何方へも参り合わせ進らせて、御仏事をも諸共に相たしなみ進らすべく候いつるに、所労と申し、また一方ならざる御事と申し、何方にも参り合わせ進らさず候いつること、恐れ入って候上、歎き存じ候。
 そもそも代も始まりて候。聖人より後も三年は過ぎ行き候に、安国論のこと、御沙汰いかようなるべく候らん。鎌倉には定めて御さばくり候らんめども、これは参ってこの度の御世間承らず候に、なお今も身の術無きままはたらかず候えば仰せを蒙ることも候わず、万事暗々と覚え候。この秋より随分寂日房と申し談じ候いて、御辺へ参らすべく候いつるに、それも叶わず候。
 何事よりも身延沢の御墓の荒れはて候いて、鹿かせきの蹄に親り懸からせ給い候こと、目も当てられぬことに候。地頭の不法ならん時は我も住むまじき由、御遺言とは承り候えども、不法の色も見え候わず。その上、聖人は日本国中に我を持つ人無かりつるに、この殿ばかりあり。しかれば墓をせんにも国主の用いんほどはなお難くこそあらんずれば、いかにもこの人の所領に臥すべき御状候いしこと、日興の賜ってあそばされてこそ候いしか。これは後代まで定めさせ給いて候を、かしこに