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しげなれば、云うことも疑いあらじとばかり御信用候あいだ、おもわざるに、法華経の敵、釈迦仏の怨とならせ給いて、今生には祈る所願も虚しく、命もみじかく、後生には無間大城をすみかとすべしと、正しく経文に見えて候。
さて、この経の題目は、習い読むことなくして大いなる善根にて候。悪人も女人も、畜生も地獄の衆生も、十界ともに即身成仏と説かれて候は、水の底なる石に火のあるがごとく、百千万年くらき所にも灯を入れぬればあかくなる。世間のあだなるものすら、なお、かように不思議あり。いかにいわんや、仏法の妙なる御法の御力をや。我ら衆生の悪業・煩悩・生死果縛の身が、正・了・縁の三仏性の因によりて、即ち法・報・応の三身と顕れんこと、疑いなかるべし。「妙法経力もて即身成仏す」と伝教大師も釈せられて候。心は、法華経の力にてはくちなわの竜女も即身成仏したりと申すことなり。御疑い候べからず。委しくは見参に入り候いて申すべく候と申させ給え。
弘安元年戊寅七月三日 日蓮 花押
妙法尼御前御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(407)妙法尼御前御返事(一句肝心の事) | 弘安元年(’78)7月3日 | 57歳 | 妙法尼 |