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にねんごろに仏ほめさせ給えり。
かかる法華経を、末代の女人、二十八品を品々ごとに供養せばやとおぼしめす。ただ事にはあらず。
宝塔品の御時は、多宝如来・釈迦如来・十方の諸仏、一切の菩薩あつまらせ給いぬ。この宝塔品はいずれのところにか只今ましますらんとかんがえ候えば、日女御前の御胸の間、八葉の心蓮華の内におわしますと日蓮は見まいらせて候。
例せば、蓮のみに蓮華の有るがごとく、后の御腹に太子を懐妊せるがごとし。十善を持てる人、太子と生まれんとして后の御腹にましませば、諸天これを守護す。故に、太子をば天子と号す。法華経二十八品の文字六万九千三百八十四字、一々の文字は、字ごとに太子のごとし、字ごとに仏の御種子なり。
闇の中に影あり。人これをみず。虚空に鳥の飛ぶ跡あり。人これをみず。大海に魚の道あり。人これをみず。月の中に四天下の人・物一つもかけず。人これをみず。しかりといえども、天眼はこれをみる。日女御前の御身の内心に宝塔品まします。凡夫は見ずといえども、釈迦・多宝・十方の諸仏は御らんあり。日蓮またこれをすいす。あらとうとし、とうとし。
周の文王は老いたる者をやしないていくさに勝ち、その末三十七代八百年の間、すえずえにはひが事ありしかども、根本の功によりてさかえさせ給う。阿闍世王は大悪人たりしかども、父・びんばさら王の仏を数年やしないまいらせし故に、九十年の間位を持ち給いき。当世もまたかくのごとく、法華経の御かたきに成りて候代なれば、須臾も持つべしとはみえねども、故権大夫殿・武蔵前司入道
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(406)日女御前御返事(嘱累品等大意の事) | 弘安元年(’78)6月25日 | 57歳 | 日女 |