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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 乃往過去の世に一りの大王あり。名を輪陀と申す。この王は、白馬の鳴くを聞いて、色もいつくしく、力も強く、供御を進らせざれども食にあき給う。他国の敵も冑を脱ぎ、掌を合わす。また、この白馬鳴くことは白鳥を見て鳴きけり。しかるに、大王の政や悪しかりけん、また過去の悪業や感じけん、白鳥皆失せて一羽もなかりしかば、白馬鳴くことなし。白馬鳴かざりければ、大王の色も変じ、力も衰え、身もかじけ、謀も薄くなりし故に、国既に乱れぬ。他国よりも兵者せめ来らんに、何とかせんと歎きしほどに、大王の勅宣に云わく「国には外道多し。皆、我帰依し奉る。仏法もまたかくのごとし。しかるに、外道と仏法と中悪し。いかにしても白馬を鳴かせん方を信じて、一方を我が国に失うべし」と云々。その時に一切の外道集まって、白鳥を現じて白馬を鳴かせんとせしかども、白鳥現ずることなし。昔は、雲を出だし霧をふらし、風を吹かせ波をたて、身の上に火を出だし水を現じ、人を馬となし馬を人となし、一切自在なりしかども、いかんがしけん、白鳥を現ずることなかりき。
 その時に馬鳴菩薩と申す仏子あり。十方の諸仏に祈願せしかば、白鳥則ち出で来って白馬則ち鳴けり。大王これを聞こしめし、色も少し出で来り、力も付き、はだえもあざやかなり。また白鳥また白鳥と、千の白鳥出現して、千の白馬、一時に鶏の時をつくるように鳴きしかば、大王この声を聞こしめし、色は日輪のごとし、膚は月のごとし、力は那羅延のごとし、謀は梵王のごとし。その時に綸言汗のごとく出でて返らざれば、一切の外道等その寺を仏寺となしぬ。
 今、日本国またかくのごとし。この国は始めは神代なり。漸く代の末になるほどに、人の意曲がり