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らめ。
天台智者大師と申す聖人、妙法蓮華経の五字を玄義十巻一千丁に書き給いて候。その心は、華厳経は八十巻・六十巻・四十巻、阿含経数百巻、大集方等数十巻、大品般若四十巻・六百巻、涅槃経四十巻・三十六巻、乃至月氏・竜宮・天上・十方世界の大地微塵の一切経は、妙法蓮華経の経の一字の所従なり。妙楽大師、重ねて十巻造るを釈籤と名づけたり。天台以後に渡りたる漢土の一切経、新訳の諸経は皆、法華経の眷属なり云々。日本の伝教大師、重ねて新訳の経々の中の大日経等の真言の経を皆、法華経の眷属と定められ候い畢わんぬ。ただし、弘法・慈覚・智証等は、この義に水火なり。この義、後にほぼ書きたり。譬えば、五畿七道、六十六箇国・二つの島、その中の郡と荘と村と田と畠と人と牛馬と金銀等は、皆、日本国の三字の内に備わって一つも闕くることなし。
また、王と申すは、三の字を横に書いて、一の字を竪さまに立てたり。横の三の字は天・地・人なり。竪の一の文字は王なり。須弥山と申す山の大地をつきとおして傾かざるがごとし。天・地・人を貫いて少しも傾かざるを王とは名づけたり。王に二つあり。一には小王なり。人王・天王これなり。二には大王なり。大梵天王これなり。日本国は大王のごとし、国々の受領等は小王なり。華厳経・阿含経・方等経・般若経・大日経・涅槃経等の已今当の一切経は小王なり。譬えば、日本国中の国王・受領等のごとし。法華経は大王なり。天子のごとし。しかれば、華厳宗・真言宗等の諸宗の人々は、国主の内の所従等なり。国々の民の身として天子の徳を奪い取るは、下剋上・背上向下・破上下乱等これなり。たといいかに世間を治めんと思う志ありとも、国も乱れ人も亡びぬべし。譬えば、木の根
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(389)内房女房御返事 | 弘安3年(’80)8月14日 | 59歳 | 内房女房 |