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窪尼御前御返事(供養善根の事)
弘安4年(ʼ81)12月27日 60歳 窪尼
しなじなのものおくり給びて候。
善根と申すは、大いなるによらず、またちいさきにもよらず、国により、人により、時により、ようようにかわりて候。
譬えば、くそをほして、つきくだき、ふるいて、せんだんの木につくり、また女人・天女・仏につくりまいらせて候えども、火をつけてやき候えば、べちの香なし、くそくさし。そのように、ものをころし、ぬすみをして、そのはつおをとりて功徳・善根をして候えども、かえりて悪となる。
須達長者と申せし人は、月氏第一の長者、ぎおん精舎をつくりて仏を入れまいらせたりしかども、彼の寺焼けてあとなし。この長者、もといおをころしてあきなえて長者となりしゆえに、この寺ついにうせにき。
今の人々の善根もまたかくのごとく、大いなるようなれども、あるいはいくさをして所領を給び、あるいはゆえなく民をわずらわしてたからをもうけて善根をなす。これらは大いなる仏事とみゆれども、仏にもならざる上、その人々あともなくなることなり。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(370)窪尼御前御返事(供養善根の事) | 弘安4年(’81)12月27日 | 60歳 | 窪尼 |