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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(367)

窪尼御前御返事(孝養善根の事)

 弘安2年(ʼ79)5月4日 58歳 窪尼

 御供養の物、数のままにたしかに給び候。当時は五月の比おいにて、民のいとまなし。その上、宮の造営にて候なり。かかる暇なき時、山中の有り様思いやらせ給いて送りたびて候こと、御志殊にふかし。
 阿育大王と申せし王は、この天の日のめぐらせ給う一閻浮提を大体しろしめされ候いし王なり。この王は、昔、徳勝とて五つになる童にて候いしが、釈迦仏にすなごのもちいをまいらせたりしゆえに、かかる大王と生まれさせ給う。この童は、さしも心ざしなし、たわぶれなるようにてこそ候いしかども、仏のめでたくおわすれば、わずかのこともものとなりて、かかるめでたきこと候。まして法華経は仏にまさらせ給うこと、星と月と、ともしびと日とのごとし。また御心ざしもすぐれて候。
 されば、故入道殿も仏にならせ給うべし。また一人おわするひめ御前も、いのちもながく、さいわいもありて、さる人のむすめなりときこえさせ給うべし。当時も、おさなけれども、母をかけてすごす女人なれば、父の後世をもたすくべし。
 から国にせいしと申せし女人は、わかなを山につみて、おいたるはわをやしないき。天あわれみて、越王と申す大王のかりせさせ給いしが、みつけてきさきとなりにき。これもまた、かくのごとし。お