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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 よのなか、上につけ下によせてなげきこそおおく候え。よにある人々をば、よになき人々は、きじのたかをみ、がきの毘沙門をたのしむがごとく候えども、たかはわしにつかまれ、びしゃもんはすらにせめらる。
 そのように、当時、日本国のたのしき人々は、蒙古国のことをききては、ひつじの虎の声を聞くがごとし。また、筑紫へおもむきていとおしきめをはなれ子をみぬは、皮をはぎ肉をやぶるがごとくにこそ候らめ。いおうや、かの国よりおしよせなば、蛇の口のかえる、ほうちょうしがまないたにおけるこい・ふなのごとくこそおもわれ候らめ。今生はさておきぬ、命きえなば一百三十六の地獄に堕ちて、無量劫ふべし。
 我らは法華経をたのみまいらせて候えば、あさきふちに魚のすむが、天くもりて雨のふらんとするを魚のよろこぶがごとし。しばらくの苦こそ候とも、ついにはたのしかるべし。国王の一人の太子のごとし、いかでか位につかざらんとおぼしめし候え。恐々謹言。
  弘安三年七月二日    日蓮 花押
 上野殿御返事
  人にしらせずして、ひそかにおおせ候べし。