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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(324)

上野殿御返事(刀杖難の事)

 弘安2年(ʼ79)4月20日 58歳 南条時光

 そもそも、日蓮、種々の大難の中には竜の口の頸の座と東条の難にはすぎず。その故は、諸難の中には命をすつる程の大難はなきなり。あるいはのり、せめ、あるいは処をおわれ、無実を云いつけられ、あるいは面をうたれしなどは物のかずならず。されば、色心の二法よりおこりてそしられたる者は、日本国の中には日蓮一人なり。ただし、ありとも、法華経の故にはあらじ。
 さてもさてもわすれざることは、しょうぼうが法華経の第五の巻を取って日蓮がつらをうちしことは、三毒よりおこるところのちょうちゃくなり。
 天竺に嫉妬の女人あり。男をにくむ故に、家内の物をことごとく打ちやぶり、その上に、あまりの腹立ちにや、すがたけしきかわり、眼は日月の光のごとくかがやき、くちは炎をはくがごとし。すがたは青鬼・赤鬼のごとくにて、年来男のよみ奉る法華経の第五の巻をとり、両の足にてさんざんにふみける。その後、命つきて、地獄におつ。両の足ばかり地獄にいらず。獄卒、鉄杖をもってうてどもいらず。これは、法華経をふみし逆縁の功徳による。
 今、日蓮をにくむ故に、しょうぼうが第五の巻を取って予がおもてをうつ。これも逆縁となるべき