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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(304)

単衣抄

 建治元年(ʼ75)8月 54歳 南条殿の縁者

 単衣一領、送り給び候い畢わんぬ。
 棄老国には老者をすて、日本国には、今、法華経の行者をすつ。そもそもこの国、開闢より天神七代・地神五代・人王百代あり。神武より已後九十代、欽明より仏法始まって六十代七百余年に及べり。その中に、父母を殺す者、朝敵となる者、山賊・海賊、数を知らざれども、いまだきかず、法華経の故に日蓮程人に悪まれたる者はなし。あるいは王に悪まれたれども民には悪まれず、あるいは僧は悪めば俗はもれ、男は悪めば女はもれ、あるいは愚癡の人は悪めば智人はもれたり。これは、王よりは民、男女よりは僧尼、愚人よりは智人悪む。悪人よりは善人悪む。前代未聞の身なり。後代にも有るべしともおぼえず。故に、生年三十二より今年五十四に至るまで二十余年の間、あるいは寺を追い出だされ、あるいは処をおわれ、あるいは親類を煩わされ、あるいは夜打ちにあい、あるいは合戦にあい、あるいは悪口数をしらず。あるいは打たれ、あるいは手を負い、あるいは弟子を殺され、あるいは頸を切られんとし、あるいは流罪両度に及べり。
 二十余年が間、一時片時も心安きことなし。頼朝の七年の合戦も、ひまやありけん。頼義が十二年