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しかば、わざとかまくらよりうちくだかり、御はかをば見候いぬ。
それよりのちは、するがのびんにはとおもいしに、このたびくだしには人にしのびてこれへきたりしかば、にしやまの入道殿にもしられ候わざりし上は、力およばずとおりて候いしが、心にかかりて候。
その心をとげんがために、この御房は正月の内につかわして、御はかにて自我偈一巻よませんとおもいて、まいらせ候。「御とのの御かたみもなし」なんどなげきて候えば、とのをとどめおかれけること、よろこび入って候。
故殿は、木のもと、くさむらのかげ、かよう人もなし、仏法をも聴聞せんず、いかにつれづれなるらん。おもいやり候えば、なんだもとどまらず。とのの法華経の行者うちぐして御はかにむかわせ給うには、いかにうれしかるらん、いかにうれしかるらん。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(300)春の祝御書 | 文永12年(’75)1月 | 54歳 | 南条時光 |