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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(273)

中興入道消息

 弘安2年(ʼ79)11月30日 58歳 中興入道夫妻

 鵝目一貫文、送り給び候い了わんぬ。妙法蓮華経の御宝前に申し上げ候い了わんぬ。
 そもそも、日本国と申す国は、須弥山よりは南、一閻浮提の内縦広七千由旬なり、その内に八万四千の国あり。いわゆる、五天竺、十六の大国、五百の中国、十千の小国、無量の粟散国、微塵の島々あり。これらの国々は皆、大海の中にあり。たとえば、池にこのはのちれるがごとし。
 この日本国は大海の中の小島なり。しおみてば見えず、ひればすこしみゆるかの程にて候いしを、神のつき出ださせ給いて後、人王のはじめ、神武天皇と申せし大王おわしましき。それよりこのかた三十余代は、仏と経と僧とはましまさず。ただ人と神とばかりなり。仏法おわしまさねば、地獄もしらず、浄土もねがわず。父母・兄弟のわかれありしかども、いかんがなるらん、ただ露のきゆるように、日月のかくれさせ給うようにうちおもいてありけるか。
 しかるに、人王第三十代欽明天皇と申す大王の御宇に、この国より戌亥の角に当たって百済国と申す国あり。彼の国よりせいめい王と申せし王、金銅の釈迦仏と、この仏の説かせ給える一切経と申すふみと、これをよむ僧をわたしてありしかば、仏と申すものもいきたるものにもあらず、経と申すも