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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(213)

中務左衛門尉殿御返事

 弘安元年(ʼ78)6月26日 57歳 四条金吾

 夫れ、人に二病あり。一には身の病。いわゆる、地大百一・水大百一・火大百一・風大百一、已上四百四病。この病は治水・流水・耆婆・扁鵲等の方薬をもってこれを治す。二には心の病。いわゆる三毒乃至八万四千の病なり。仏にあらざれば二天三仙も治しがたし。いかにいわんや、神農・黄帝の力及ぶべしや。
 また心の病に重々の浅深分かれたり。六道の凡夫の三毒・八万四千の心の病をば、小乗の三蔵・俱舎・成実・律宗の仏これを治す。大乗の華厳・般若・大日経等の経々をそしりて起こる三毒八万の病をば、小乗をもってこれを治すれば、かえりては増長すれども平愈全くなし。大乗をもってこれを治すべし。また諸大乗経の行者の法華経を背いて起こる三毒八万の病をば、華厳・般若・大日経・真言・三論等をもってこれを治すれば、いよいよ増長す。譬えば、木石等より出でたる火は、水をもって消しやすし。水より起こる火は、水をかくればいよいよ熾盛に炎上し高くあがる。
 今の日本国、去・今年の疫病は、四百四病にあらざれば、華佗・扁鵲が治も及ばず。小乗・権大乗の八万四千の病にもあらざれば、諸宗の人々のいのりも叶わず、かえりて増長するか。たとい今年は