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華経を御信用あること、ただ事ともおぼえず。ただおしはかるに、濁水に玉を入れぬれば水のすむがごとし。しらざることをよき人におしえられてそのままに信用せば、道理にきこゆるがごとし。釈迦仏・普賢菩薩・薬王菩薩・宿王華菩薩等の各々の御心中に入り給えるか。法華経の文に「閻浮提にこの経を信ぜん人は、普賢菩薩の御力なり」と申す、これなるべし。
女人はたとえば藤のごとし。おとこは松のごとし。須臾もはなれぬれば立ちあがることなし。はかばかしき下人もなきに、かかる乱れたる世にこのとのをつかわされたる心ざし、大地よりもあつし。地神定めてしりぬらん。虚空よりもたかし。梵天・帝釈もしらせ給いぬらん。
人の身には、同生・同名と申す二りのつかいを、天生まるる時よりつけさせ給いて、影の身にしたがうがごとく、須臾もはなれず、大罪・小罪、大功徳・小功徳、すこしもおとさず、かわるがわる天にのぼって申し候と仏説き給う。このこと、はや天もしろしめしぬらん。たのもしし、たのもしし。
四月 日 日蓮 花押
四条金吾殿女房御返事
この御文は、藤四郎殿の女房と常によりあいて御覧あるべく候。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(193)同生同名御書 | 文永9年(’72)4月 | 51歳 | 日眼女 |