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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

すて出家して、天竺五十余の国を修行して顕密二道をきわめ、後には漢土にわたりて玄宗皇帝の御師となる。尸那・日本の真言師、誰かこの人のながれにあらざる。かかるとうとき人なれども、一時に頓死して閻魔のせめにあわせ給う。いかなりけるゆえとも人しらず。日蓮これをかんがえたるに、本は法華経の行者なりしが、大日経を見て法華経にまされりといいしゆえなり。
 されば、舎利弗・目揵連等が三・五の塵点劫を経しことは、十悪五逆の罪にもあらず、謀反八虐の失にてもあらず。ただ悪知識に値って法華経の信心をやぶりて権経にうつりしゆえなり。天台大師、釈して云わく「もし悪友に値わば則ち本心を失う」云々。「本心」と申すは、法華経を信ずる心なり。「失う」と申すは、法華経の信心を引きかえて余経へうつる心なり。されば、経文に云わく「しかも良薬を与うれども、あえて服せず」等云々。天台云わく「その心を失う者は、良薬を与うといえども、しかもあえて服せず。生死に流浪し、他国に逃逝す」云々。
 されば、法華経を信ずる人のおそるべきものは、賊人・強盗・夜打ち・虎狼・師子等よりも、当時の蒙古のせめよりも、法華経の行者をなやます人々なり。
 この世界は第六天の魔王の所領なり。一切衆生は、無始已来、彼の魔王の眷属なり。六道の中に二十五有と申すろうをかまえて一切衆生を入るるのみならず、妻子と申すほだしをうち、父母・主君と申すあみをそらにはり、貪・瞋・癡の酒をのませて仏性の本心をたぼらかす。ただ、あくのさかなのみをすすめて三悪道の大地に伏臥せしむ。
 たまたま善の心あれば障礙をなす。法華経を信ずる人をばいかにもして悪へ堕とさんとおもうに、