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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

る。鷲・鵰・鴟・梟・虎・狼・犬・狐集まって昼夜に取り噉らうなり。十年二十年に一つも竜となる魚なし。
 例せば、凡下の者の昇殿を望み、下女が后と成らんとするがごとし。法華経を信ずること、これにも過ぎて候と思しめせ。
 常に仏禁めて言わく、いかなる持戒、智慧高く御坐しまして一切経ならびに法華経を進退せる人なりとも、法華経の敵を見て、責め罵り国主にも申さず、人を恐れて黙止するならば、必ず無間大城に堕つべし。譬えば、我は謀叛を発さねども、謀叛の者を知って国主にも申さねば、与同罪は彼の謀叛の者のごとし。南岳大師云わく「法華経の讐を見て呵責せざる者は謗法の者なり。無間地獄の上に堕ちん」と。見て申さぬ大智者は、無間の底に堕ちて、彼の地獄の有らん限りは出ずべからず。
 日蓮、この禁めを恐るる故に国中を責めて候ほどに、一度ならず流罪・死罪に及びぬ。今は罪も消え、過も脱れなんと思って、鎌倉を去ってこの山に入って七年なり。
 この山の為体、日本国の中には七道あり。七道の内に東海道十五箇国、その内に甲州の飯野御牧の三箇郷の内、波木井と申すこの郷の内、戌亥の方に入って二十余里の深山あり。北は身延山、南は鷹取山、西は七面山、東は天子山なり。板を四枚つい立てたるがごとし。この外を回って四つの河あり。北より南へ富士河、西より東へ早河、これは後ろなり。前に西より東へ波木井河の中に一つの滝あり。身延河と名づけたり。中天竺の鷲峰山をこの処へ移せるか、はたまた漢土の天台山の来れるかと覚ゆ。
 この四山四河の中に手の広さ程の平らかなる処あり。ここに庵室を結んで天雨を脱れ、木の皮をは