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人々の堕つる地獄なり。
六道の中に天道と申すは、その所に生ずるより衣服ととのおりて生まるるところなり。人道の中にも、商那和修・鮮白比丘尼等は、悲母の胎内より衣服ととのおりて生まれ給えり。これは、とうとき人々に衣服をあたえたるのみならず、父母・主君・三宝に、きよくあつき衣をまいらせたる人なり。商那和修と申せし人は、裸形なりし辟支仏に衣をまいらせて、世々生々に衣服身に随う。憍曇弥と申せし女人は、仏にきんばら衣をまいらせて、一切衆生喜見仏となり給う。
今、法華経に衣をまいらせ給う女人あり。後生にはちかん地獄の苦をまぬかれさせ給うのみならず、今生には大難をはらい、その功徳のあまりを、男女のきんだち、きぬにきぬをかさね、いろにいろをかさね給うべし。あなかしこ、あなかしこ。
建治三年丁丑十一月十八日 日蓮 花押
太田入道殿女房御返事
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(154)太田殿女房御返事(八寒地獄の事) | 建治3年(’77)11月18日 | 56歳 | 大田乗明の妻 |