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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(154)

太田殿女房御返事(八寒地獄の事)

 建治3年(ʼ77)11月18日 56歳 大田乗明の妻

 柿のあおうらの小袖、わた十両に及んで候か。
 この大地の下は二つの地獄あり。一には熱地獄。すみをおこし、野に火をつけ、しょうもうの火、鉄のゆのごとし。罪人のやくることは、大火に紙をなげ、大火にかなくずをなぐるがごとし。この地獄へは、やきとりと、火をかけてかたきをせめ、物をねたみて胸をこがす女人の堕つる地獄なり。
 二には寒地獄。この地獄に八つあり。涅槃経に云わく「八種の寒氷地獄あり。いわゆる阿波々地獄・阿咤々地獄・阿羅々地獄・阿婆々地獄・優鉢羅地獄・波頭摩地獄・拘物頭地獄・芬陀利地獄なり」云々。この八大かん地獄は、あるいはかんにせめられたるこえ、あるいは身のいろ等にて候。この国のすわの御いけ、あるいは越中のたて山のかえし、加賀の白山のれいのとりのはねをとじられ、やもめおうなのすそのひゆる、ほろろの雪にせめられたるをもってしろしめすべし。かんにせめられて、おとがいのわなめく等を、阿波々・阿咤々・阿羅々等と申す。かんにせめられて、身のくれないににたるを紅蓮・大紅蓮等と申すなり。いかなる人のこの地獄におつるぞと申せば、この世にて、人の衣服をぬすみとり、父母・師匠等のさむげなるをみまいらせて、我はあつくあたたかにして昼夜をすごす