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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(133)

聖人知三世事

 建治元年(ʼ75) 54歳 富木常忍

 聖人と申すは、委細に三世を知るを聖人と云う。儒家の三皇五帝ならびに三聖は、ただ現在を知って過・未を知らず。外道は過去八万・未来八万を知る。一分の聖人なり。小乗の二乗は過去・未来の因果を知る。外道に勝れたる聖人なり。小乗の菩薩は過去三僧祇の菩薩、通教の菩薩は過去に動逾塵劫を経歴せり。別教の菩薩は一々の位の中に多俱低劫の過去を知る。法華経の迹門は過去の三千塵点劫を演説す。一代超過これなり。本門は五百塵点劫の過去遠々劫をもこれを演説し、また未来無数劫のことをも宣伝す。これによってこれを案ずるに、委しく過・未を知るは聖人の本なり。教主釈尊、既に近くは去って後三月の涅槃これを知る。遠くは後の五百歳広宣流布疑いなきものか。もししからば、近きをもって遠きを推し、現をもって当を知る。「如是相乃至本末究竟等」これなり。
 後の五百歳には、誰人をもって法華経の行者とこれを知るべきや。予はいまだ我が智慧を信ぜず。しかりといえども、自他の反逆・侵逼、これをもって我が智を信ず。あえて他人のためにあらず。また、我が弟子等、これを存知せよ。日蓮はこれ法華経の行者なり。不軽の跡を紹継するの故に。軽毀する人は頭七分に破れ、信ずる者は福を安明に積まん。