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答えて云わく、法華経に云わく「また大梵天王の一切衆生の父なるがごとし」。また云わく「この経も○諸経の中に、最もこれ第一なり。能くこの経典を受持することあらん者もまたかくのごとく、一切衆生の中において、またこれ第一なり」等云々。伝教大師、秀句に云わく「天台法華宗の諸宗に勝るることは、宗とするところの経に拠るが故に、自讃毀他ならず。庶わくは、有智の君子、経を尋ねて宗を定めよ」等云々。
星の中に勝れたるは月、星月の中に勝れたるは日輪なり。小国の大臣は大国の無官より下ること傍例なり。外道の五通を得るより、仏弟子の小乗の三賢の者のいまだ一通を得ざるは、天地なお勝る。法華経の外の諸経の大菩薩は、法華の名字即の凡夫より下れり。
何ぞ汝、始めてこれに驚かんや。教に依って人の勝劣を定む。まず経の勝劣を知らずんば、何ぞ人の高下を論ぜんや。
問うて云わく、汝法華経の行者ならば、何ぞ、天、汝を守護せざるや。
答えて云わく、法華経に云わく「悪鬼はその身に入る」等云々。首楞厳経に云わく「修羅王有り。世界を執持して、能く梵王および天帝釈・四天と権を諍う。この阿修羅は変化に因って有り。天趣の所摂なり」等云々。
能く大梵天王・帝釈・四天と戦う大阿修羅王有って、禅宗・念仏宗・律宗等の棟梁の心中に付け入って、次第に国主に遷り入って、国の中に賢人を失う。かくのごとき大悪は梵釈もなお防ぎ難きか。いかにいわんや日本守護の少神をや。ただ地涌千界の大菩薩・釈迦・多宝・諸仏の御加護にあらざれば
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(124)真言諸宗違目 | 文永9年(’72)5月5日 | 51歳 | 富木常忍 |