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上のせめさせ給うにこそ、法華経を信じたる色もあらわれ候え。月はかけてみち、しおはひてみつこと疑いなし。これも罰あり。必ず徳あるべし。なにしにかなげかん。
(120)
寺泊御書
文永8年(ʼ71)10月22日 50歳 富木常忍
今月〈十月なり〉十日、相州愛京郡依智郷を起って武蔵国久目河の宿に付き、十二日を経て越後国寺泊の津に付きぬ。これより大海を亘って佐渡国に至らんと欲するに、順風定まらず、その期を知らず。道の間の事、心も及ぶことなく、また筆にも及ばず。ただ暗に推し度るべし。また本より存知の上なれば、始めて歎くべきにあらざれば、これを止む。
法華経の第四に云わく「しかもこの経は、如来の現に在すすらなお怨嫉多し。いわんや滅度して後をや」。第五の巻に云わく「一切世間に怨多くして信じ難し」。涅槃経の三十八に云わく「その時に一切の外道の衆ことごとくこの言を作さく、大王○今、ただ一りの大悪人有り、瞿曇沙門なり○一切の世間の悪人は、利養のための故に、その所に往き集まって眷属となり、善を修すること能わず。呪術の力の故に、迦葉および舎利弗・目揵連等を調伏す」云々。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(119)土木殿御返事(依智滞在の事) | 文永8年(’71)9月15日 | 50歳 | 富木常忍 |
(120)寺泊御書 | 文永8年(’71)10月22日 | 50歳 | 富木常忍 |