SOKAnetトップ

『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 答えて云わく、日蓮はこの人々を難ずるにはあらず、ただ不審するばかりなり。いかりおぼせば、さておわしませ。外道の法門は、一千年・八百年、五天にはびこりて、輪王より万民こうべをかたぶけたりしかども、九十五種共に仏にやぶられたりき。摂論師が邪義、百余年なりしもやぶれき。南北の三百余年の邪見もやぶれき。日本二百六十余年の六宗の義もやぶれき。その上、このことは、伝教大師のある書の中にやぶられて候を申すなり。
 日本国は大乗に五宗あり。法相・三論・華厳・真言・天台なり。小乗に三宗あり。俱舎・成実・律宗なり。真言・華厳・三論・法相は大乗よりいでたりといえども、くわしく論ずれば皆小乗なり。宗と申すは、戒・定・慧の三学を備えたるものなり。その中に定・慧はさておきぬ、戒をもって大小のほうじをうちわかつものなり。東寺の真言・法相・三論・華厳等は、戒壇なきゆえに東大寺に入って小乗律宗の驢乳・臭糞の戒を持つ。戒をもって論ぜば、これらの宗は小乗の宗なるべし。
 比叡山には、天台宗・真言宗の二宗、伝教大師習いつたえ給いたりしかども、天台円頓の円定・円慧・円戒の戒壇立つべきよし申させ給いしゆえに、「天台宗に対しては真言宗の名あるべからず」とおぼして、天台法華宗の止観・真言とあそばして、公家へまいらせ給いき。伝教より慈覚たまわらせ給いし誓戒の文には、天台法華宗の止観・真言と正しくのせられて、真言宗の名をけずられたり。天台法華宗は仏立宗と申して、仏より立てられて候。真言宗の真言は当分の宗、論師・人師始めて宗の名をたてたり。しかるを、事を大日如来・弥勒菩薩等によせたるなり。仏御存知の御意は、ただ法華経一宗なるべし。