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のこと。
右、釈迦一代の教えの中には天台をもって宗匠となす。如来五十年の間には法華をもって真実となす。これ則ち諸仏の本懐なり。そもそも、また多宝の証誠なり。上一人より下万民に至るまで、帰敬年旧り、渇仰日に新たなり。
しかるに、厳誉律師の状に云わく「四十九院の内に日蓮が弟子等居住せしむるの由、その聞こえ有り。彼の党類、仏法を学びながら外道の教えに同じ、正見を改めて邪義に住せしむるの旨、もっての外の次第なり。大衆等評定せしむるに、寺内に住せしむべからざるの由候ところなり」云々。
ここに因って、日興等たちまちに年来の住坊を追い出だされ、すでに御祈禱便宜の学道を失う。
法華の正義をもって外道の邪教と称することは、いずれの経、いずれの論文ぞや。諸経多しといえども、いまだ両眼に触れず。法華の中に諸経を破るの文これ有りといえども、諸経の裏に法華を破るの文全くこれ無し。詮ずるところ、已今当の三説をもって教法の方便を破摧することは、さらに日蓮聖人の莠言にあらず、皆これ釈尊出世の金口なり。
ここに真言および諸宗の人師等、大小乗の浅深を弁えず、権実教の雑乱を知らず、あるいは勝をもって劣と称し、あるいは権をもって実と号し、意樹に任せて砂草を造る。よって、愚癡の輩、短才の族、経々に顕然の正説を伺わず、いたずらに師資相伝の口決を信じ、秘密の法力を行ずといえども、真実の験証無し。天地これがために妖孼を示し、国土これがために災難多し。これしかしながら、仏法の邪正を糾さず、僧侶の賢愚を撰ばざるが故なり。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(080)四十九院申状 | 弘安元年(’78)3月 | 57歳 |