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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(054)

法華真言勝劣事

 文永元年(ʼ64)7月29日 43歳

 東寺の弘法大師空海の所立に云わく「法華経はなお華厳経に劣れり。いかにいわんや大日経等においてをや」云々。慈覚大師円仁・智証大師円珍・安然和尚等云わく「法華経の理は大日経に同じ。印と真言との事においては、これなお劣れるなり」云々〈その所釈は余処にこれを出だす〉。
 空海は大日経・菩提心論等に依って十住心を立て、顕密の勝劣を判ず。その中に「第六に他縁大乗心は法相宗、第七に覚心不生心は三論宗、第八に如実一道心は天台宗、第九に極無自性心は華厳宗、第十に秘密荘厳心は真言宗なり。この所立の次第は浅きより深きに至る。その証文は大日経の住心品と菩提心論とに出ず」と云えり。
 しかるに、出だすところの大日経住心品を見て、「他縁大乗」「覚心不生」「極無自性」を尋ぬるに、名目は経文にこれ有り。しかりといえども、「他縁」「覚心」「極無自性」の三句を法相・三論・華厳に配する名目はこれ無し。その上、「覚心不生」と「極無自性」との中間に、「如実一道」の文義共にこれ無し。
 ただし、この品の初めに「いかんが菩提。謂わく、実のごとく自心を知る」等の文これ有り。この