『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

きがごとく、成仏に滞り無し。
　薬王品には十喩をもって自行と化他との力用の勝劣を判ぜり。第一の譬えに云わく「諸経は諸水のごとく、法華は大海のごとし」云々〈取意〉。実に自行の法華経の大海には化他の諸経の衆水を入るること、昼夜に絶えず入るるといえども増ぜず減ぜず、不可思議の徳用を顕す。諸経の衆水は片時のほども法華経の大海を納るることなし。自行と化他との勝劣かくのごとし。一つをもって諸を例せよ。
　上来の譬喩は皆、仏の所説なり。人の語を入れず。この旨を意得れば、一代聖教鏡に懸けて陰り無し。この文釈を見て誰の人か迷惑せんや。三世の諸仏の総勘文なり。あえて人の会釈を引き入るべからず。三世の諸仏の出世の本懐なり。一切衆生成仏の直道なり。
　四十二年の化他の経をもって立つるところの宗々は、華厳・真言・達磨・浄土・法相・三論・律宗・俱舎・成実等の諸宗なり。これらは皆ことごとく法華より已前の八教の中の教えなり。皆これ方便なり。兼・但・対・帯の方便の誘引なり。三世の諸仏の説教の次第なり。この次第を糾して法門を談ず。もし次第に違わば、仏法にあらざるなり。一代教主の釈迦如来も、三世の諸仏の説教の次第を糾して、一字も違わず我もまたかくのごとしとて、経に云わく「三世の諸仏の説法の儀式のごとく、我も今またかくのごとく無分別の法を説く」已上。もしこれに違わば、永く三世の諸仏の本意に背く。他宗の祖師、各我が宗を立てて法華宗と諍うこと、誤りの中の誤り、迷いの中の迷いなり。
　徴他学の決〈山王院〉にこれを破して云わく「およそ八万法蔵、その行相を統ぶるに、四教を出でず。頭辺に示すがごとし。蔵・通・別・円は即ち声聞・縁覚・菩薩・仏乗なり。真言・禅門・華厳・三論・唯