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をつぶさに説かせ給わば、人聴いて血をはいて死すべき故に、くわしく仏説き給わずとみえたり。
この無間地獄の寿命の長短は一中劫なり。一中劫と申すは、この人寿無量歳なりしが、百年に一寿を減じ、また百年に一寿を減ずるほどに、人寿十歳の時に減ずるを一減と申す。また十歳より百年に一寿を増し、また百年に一寿を増するほどに、八万歳に増するを一増と申す。この一増一減のほどを小劫として、二十の増減を一中劫とは申すなり。この地獄に堕ちたる者、これ程久しく無間地獄に住して、大苦をうくるなり。
業因を云わば、五逆罪を造る人、この地獄に堕つべし。五逆罪と申すは、一に殺父、二に殺母、三に殺阿羅漢、四に出仏身血、五に破和合僧なり。今の世には仏ましまさず。しかれば出仏身血あるべからず。和合僧なければ、破和合僧なし。阿羅漢なければ、殺阿羅漢これなし。ただ殺父・殺母の罪のみありぬべし。しかれども、王法のいましめきびしくあるゆえに、この罪おかしがたし。もししからば、当世には阿鼻地獄に堕つべき人すくなし。ただし、相似の五逆罪これあり。木画の仏像・堂塔等をやき、かの仏像等の寄進の所をうばいとり、率兜婆等をきりやき、智人を殺しなんどするもの多し。これらは大阿鼻地獄の十六の別処に堕つべし。されば、当世の衆生、十六の別処に堕つるもの多きか。また、謗法の者、この地獄に堕つべし。
第二に無間地獄の因果の軽重を明かさば、
問うて云わく、五逆罪より外の罪によりて、無間地獄に堕ちんことあるべしや。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(029)顕謗法抄 | 弘長2年(’62) | 41歳 |