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らん」。また同第七の巻の不軽品に云わく「千劫、阿鼻地獄において、大苦悩を受く」。涅槃経に云わく「善友を遠離し、正法を聞かず、悪法に住せば、この因縁の故に沈没して阿鼻地獄に在って、受くるところの身形、縦横八万四千ならん」。
広く衆経を披きたるに、専ら謗法を重んず。悲しいかな、皆正法の門を出でて深く邪法の獄に入る。愚かなるかな、各悪教の綱に懸かって鎮に謗教の網に纏わる。この朦霧の迷い、彼の盛焰の底に沈む。あに愁えざらんや、あに苦しまざらんや。
汝、早く信仰の寸心を改めて、速やかに実乗の一善に帰せよ。しからば則ち、三界は皆仏国なり。仏国それ衰えんや。十方はことごとく宝土なり。宝土何ぞ壊れんや。国に衰微無く土に破壊無くんば、身はこれ安全、心はこれ禅定ならん。この詞、この言、信ずべく、崇むべし。
客曰わく、今生・後生、誰か慎まざらん。誰か和わざらん。この経文を披いてつぶさに仏語を承るに、誹謗の科至って重く、毀法の罪誠に深し。我一仏を信じて諸仏を抛ち、三部経を仰いで諸経を閣きしは、これ私曲の思いにあらず、則ち先達の詞に随いしなり。十方の諸人もまたまたかくのごとくなるべし。今世には性心を労し、来生には阿鼻に堕ちんこと、文明らかに理詳らかなり。疑うべからず。いよいよ貴公の慈誨を仰ぎ、ますます愚客の癡心を開けり。速やかに対治を廻らして早く泰平を致し、まず生前を安んじてさらに没後を扶けん。ただ我が信ずるのみにあらず、また他の誤りをも誡めんのみ。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(002)立正安国論 | 文応元年(’60)7月16日 | 39歳 | 北条時頼 |