305ページ
答う。弘法大師の秘蔵宝鑰の十住心に云わく「第八法華、第九華厳、第十大日経」等云々。これは浅きより深きに入る。慈覚大師の金剛頂経の疏、蘇悉地経の疏、智証大師の大日経指帰等に云わく「大日経第一、法華経第二」等云々。
問う。汝が意、いかん。
答う。釈迦如来・多宝仏、総じて十方の諸仏の御評定に云わく「已今当の一切経の中に法華は最もこれ第一なり」云々。
問う。今、日本国中の天台・真言等の諸僧ならびに王臣・万民疑って云わく「日蓮法師めは弘法・慈覚・智証大師等に勝るべきか」。いかん。
答う。日蓮、反詰して云わく、弘法・慈覚・智証大師等は、釈迦・多宝・十方の諸仏に勝るべきか〈これ一〉。
今、日本国の王より民までも、教主釈尊の御子なり。釈尊の最後の御遺言に云わく「法に依って人に依らざれ」等云々。「法華は最も第一なり」と申すは法に依るなり。しかるに、三大師等に勝るべしやとのたもう諸僧・王臣・万民乃至所従、牛馬等にいたるまで、不孝の子にあらずや〈これ二〉。
問う。弘法大師は法華経を見給わずや。
答う。弘法大師、一切経を読み給えり。その中に法華経・華厳経・大日経の浅深・勝劣を読み給うに、法華経を読み給う様に云わく「文殊師利よ。この法華経は、諸仏如来の秘密の蔵にして、諸経の中において最もその下に在り」。また読み給う様に云わく「薬王よ。今汝に告ぐ。我が説くところの
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(014)本尊問答抄 | 弘安元年(’78)9月 | 57歳 | 浄顕房 |