『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

あまりに法にすぎてそしり悪口せしことがたちまちに翻りがたくて信ずる由をせず。しかも、蒙古はつよりゆく。いかんせんと宗盛・義朝がようになげくなり。あわれ、人は心はあるべきものかな。孔子は九思一言、周公旦は浴する時は三度にぎり、食する時は三度吐き給う。賢人はかくのごとく用意をなすなり。世間の法にも「ほうにすぎばあやしめ」というぞかし。国を治する人なんどが、人の申せばとて、委細にも尋ねずして左右なく科に行われしは、あわれくやしかるらんに、夏の桀王が湯王に責められ、呉王が越王に生けどりにせられし時は、賢者の諫暁を用いざりしことを悔い、阿闍世王が悪瘡身に出で他国に襲われし時は、提婆を眼に見じ耳に聞かじと誓い、乃至宗盛がいくさにまけ義経に生けどられて鎌倉に下されて面をさらせし時は、東大寺を焼き払わせ山王の御輿を射奉りしことを歎きしなり。
　今の世もまた一分もたがうべからず。日蓮を賤しみ、諸僧を貴び給う故に、自然に法華経の強敵と成り給うことを弁えず。政道に背いて行わるるあいだ、梵釈・日月・四天・竜王等の大怨敵と成り給う。法華経守護の釈迦・多宝・十方分身の諸仏、地涌千界、迹化他方、二聖二天、十羅刹女・鬼子母神、他国の賢王の身に入り易わって国主を罰し国を亡ぜんとするを知らず。真の天のせめにてだにもあるならば、たとい鉄囲山を日本国に引き回らし、須弥山を蓋いとして十方世界の四天王を集めて波際に立て並べてふせがするとも、法華経の敵となり、教主釈尊より大事なる行者を、法華経の第五の巻をもって日蓮が頭を打ち、十巻共に引き散らして散々に踏みたりし大禍は、現当二世にのがれがたくこそ候わんずらめ。日本守護の天照太神・正八幡等も、いかでか、かかる国をばたすけ給うべき。