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て後に我を外め。
問うて云わく、末代初心の行者に、何物をか制止するや。
答えて曰わく、檀・戒等の五度を制止して一向に南無妙法蓮華経と称えしむるを、一念信解・初随喜の気分となすなり。これ則ちこの経の本意なり。
疑って云わく、この義いまだ見聞せず。心を驚かし、耳を迷わす。明らかに証文を引いて、請う、苦ろにこれを示せ。
答えて曰わく、経に云わく「我がためにまた塔寺を起て、および僧坊を作り、四事をもって衆僧を供養することを須いず」。この経文、明らかに初心の行者に檀・戒等の五度を制止する文なり。
疑って云わく、汝が引くところの経文は、ただ寺塔と衆僧とばかりを制止して、いまだ諸の戒等に及ばざるか。
答えて曰わく、初めを挙げて後を略す。
問うて曰わく、何をもってこれを知らん。
答えて曰わく、次下の第四品の経文に云わく「いわんや、また人有って、能くこの経を持ち、兼ねて布施・持戒等を行ぜんをや」云々。経文分明に初・二・三品の人には檀・戒等の五度を制止し、第四品に至って始めてこれを許す。後に許すをもって知んぬ、初めは制することを。
問うて曰わく、経文、一往、相似たり。はたまた疏釈有りや。
答えて曰わく、汝が尋ぬるところの釈とは、月氏の四依の論か、はたまた漢土・日本の人師の書か。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(012)四信五品抄 | 建治3年(’77)4月10日 | 56歳 | 富木常忍 |