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ずべからず。しかるを、劫火おこらん時、須弥の根より豆ばかりの火いでて、須弥山をやくのみならず、三千大千世界をやき失うべし。
もし仏記のごとくならば、十宗・八宗、内典の僧等が仏教の須弥山をば焼き払うべきにや。小乗の俱舎・成実・律僧等が大乗をそねむ胸の瞋恚は炎なり。真言の善無畏等、禅宗の三階等、浄土宗の善導等は、仏教の師子の肉より出来せる蝗虫の比丘なり。伝教大師は三論・法相・華厳等の日本の碩徳等を六虫とかかせ給えり。日蓮は真言・禅宗・浄土等の元祖を三虫となづく。また天台宗の慈覚・安然・恵心等は、法華経・伝教大師の師子の身の中の三虫なり。
これらの大謗法の根源をただす日蓮にあだをなせば、天神もおしみ、地祇もいからせ給いて、災夭も大いに起こるなり。されば心うべし。一閻浮提第一の大事を申すゆえに、最第一の瑞相これおこれり。
あわれなるかなや、なげかしきかなや、日本国の人、皆無間大城に堕ちんことよ。悦ばしきかなや、楽しきかなや、不肖の身として今度心田に仏種をうえたる。
いまにしもみよ。大蒙古国、す万艘の兵船をうかべて日本国をせめば、上一人より下万民にいたるまで、一切の仏寺、一切の神寺をばなげすてて、各々声をつるべて「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と唱え、掌を合わせて「たすけ給え、日蓮の御房、日蓮の御房」とさけび候わんずるにや。
例せば、月支の大族王は幼日王に掌をあわせ、日本の宗盛はかじわらをうやまう。大慢のものは敵に随うという、このことわりなり。彼の軽毀大慢の比丘等は、始めには杖木をととのえて不軽菩薩
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(009)撰時抄 | 建治元年(’75) | 54歳 | 西山由比殿 |