200ページ
問うて云わく、正嘉の大地しん、文永の大彗星は、いかなることによって出来せるや。
答えて云わく、天台云わく「智人は起を知り、蛇は自ら蛇を識る」等云々。
問うて云わく、心いかん。
答えて云わく、上行菩薩の大地より出現し給いたりしをば、弥勒菩薩・文殊師利菩薩・観世音菩薩・薬王菩薩等の四十一品の無明を断ぜし人々も、元品の無明を断ぜざれば愚人といわれて、寿量品の南無妙法蓮華経の末法に流布せんずるゆえにこの菩薩を召し出だされたるとは、しらざりしということなり。
問うて云わく、日本・漢土・月支の中にこのことを知る人あるべしや。
答えて云わく、見思を断尽し四十一品の無明を尽くせる大菩薩だにも、このことをしらせ給わず。いかにいおうや、一毫の惑をも断ぜぬ者どもの、このことを知るべきか。
問うて云わく、智人なくば、いかでかこれを対治すべき。例せば、病の所起を知らぬ人の病人を治すれば、人必ず死す。この災いの根源を知らぬ人々がいのりをなさば、国まさに亡びんこと疑いなきか。あらあさましや、あらあさましや。
答えて云わく、蛇は七日が内の大雨をしり、烏は年中の吉凶をしる。これ則ち大竜の所従、また久学のゆえか。
日蓮は凡夫なり。このことをしるべからずといえども、汝等にほぼこれをさとさん。彼の周の平王の時、禿にして裸なる者出現せしを、辛有といいし者うらなって云わく「百年が内に世ほろびん」。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
---|---|---|---|
(009)撰時抄 | 建治元年(’75) | 54歳 | 西山由比殿 |