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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(314)

上野殿御返事(水火二信抄)

 建治4年(ʼ78)2月25日 57歳 南条時光

 蹲鴟・くしがき・焼き米・栗・たかんな・すづつ、給び候い了わんぬ。
 月氏に阿育大王と申す王おわしき。一閻浮提四分の一をたなごころににぎり、竜王をしたがえて雨を心にまかせ、鬼神をめしつかい給いき。始めは悪王なりしかども、後には仏法に帰し、六万人の僧を日々に供養し、八万四千の石の塔をたて給う。この大王の過去をたずぬれば、仏の在世に徳勝童子・無勝童子とて二人のおさなき人あり。土の餅を仏に供養し給いて、一百年の内に大王と生まれたり。
 仏はいみじといえども、法華経にたいしまいらせ候えば、蛍火と日月との勝劣、天と地との高下なり。仏を供養してかかる功徳あり。いおうや法華経をや。土のもちいをまいらせてかかる不思議あり。いおうや、すずのくだ物をや。かれはけかちならず、いまはうえたる国なり。これをもっておもうに、釈迦仏・多宝仏・十羅刹女、いかでかまぼらせ給わざるべき。
 そもそも、今の時、法華経を信ずる人あり。あるいは火のごとく信ずる人もあり、あるいは水のごとく信ずる人もあり。聴聞する時はもえたつばかりおもえども、とおざかりぬればすつる心あり。水