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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

蓮ほどあまねく人にあだまれたる者候わず。守屋が寺塔をやきし、清盛入道が東大寺・興福寺を失いし、彼らが一類は彼がにくまず。将門・貞とうが朝敵となりし、伝教大師の七寺にあだまれし、彼らもいまだ日本一州の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の四衆にはにくまれず。日蓮は、父母・兄弟、師匠・同法、上一人下万民、一人ももれず、父母のかたきのごとく、謀反・強盗にもすぐれて、人ごとにあだをなすなり。
 されば、ある時は数百人にのられ、ある時は数千人にとりこめられて刀杖の大難にあう。所をおわれ、国を出ださる。結句は国主より御勘気二度。一度は伊豆国、今度は佐渡の島なり。されば、身命をつぐべきかってもなし。形体を隠すべき藤の衣ももたず。北海の島にはなたれしかば、彼の国の道俗は相州の男女よりもあだをなしき。野中にすてられて、雪にはだえをまじえ、くさをつみて命をささえたりき。彼の蘇武が胡国に十九年雪を食って世をわたりし、李陵が北海に六箇年がんくつにせめられし、我は身にてしられぬ。これはひとえに、我が身には失なし、日本国をたすけんとおもいしゆえなり。
 しかるに、尼ごぜんならびに入道殿は、彼の国に有る時は、人めをおそれて夜中に食をおくり、ある時は国のせめをもはばからず、身にもかわらんとせし人々なり。されば、つらかりし国なれども、そりたるかみをうしろへひかれ、すすむあしもかえりしぞかし。いかなる過去のえんにてやありけんとおぼつかなかりしに、またいつしかこれまでさしも大事なるわが夫を御つかいにてつかわされて候。ゆめか、まぼろしか。尼ごぜんの御すがたをばみまいらせ候わねども、心をばこれにとこそお