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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

くやが剣に、いかでかことなるべきや。これを法華経にまいらせ給う。殿の御もちの時は悪の刀、今、仏前へまいりぬれば善の刀なるべし。譬えば、鬼の道心をおこしたらんがごとし。あら不思議や、不思議や。後生にはこの刀をつえとたのみ給うべし。
 法華経は三世の諸仏発心のつえにて候ぞかし。ただし、日蓮をつえはしらともたのみ給うべし。けわしき山、あしき道、つえをつきぬればたおれず。殊に手をひかれぬればまろぶことなし。南無妙法蓮華経は死出の山にてはつえはしらとなり給え。釈迦仏・多宝仏・上行等の四菩薩は手を取り給うべし。日蓮さきに立ち候わば、御迎えにまいり候こともやあらんずらん。またさきに行かせ給わば、日蓮必ず閻魔法王にも委しく申すべく候。このこと少しもそら事あるべからず。日蓮、法華経の文のごとくならば、通塞の案内者なり。ただ一心に信心おわして霊山を期し給え。ぜにというものは用にしたがって変ずるなり。法華経もまたまたかくのごとし。やみには灯となり、渡りには舟となり、あるいは水ともなり、あるいは火ともなり給うなり。もししからば、法華経は「現世安穏、後生善処」の御経なり。
 その上、日蓮は日本国の中には安州のものなり。総じて彼の国は天照太神のすみそめ給いし国なりといえり。かしこにして、日本国をさぐり出だし給うあわの国御くりやなり。しかもこの国の一切衆生の慈父・悲母なり。かかるいみじき国なれば、定めて故ぞ候らん。いかなる宿習にてや候らん、日蓮また彼の国に生まれたり。第一の果報なるなり。この消息の詮にあらざれば、委しくはかかず。ただ、おしはかり給うべし。