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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

 この王は、たとい悪逆を犯すとも、一・二・三度等には左右なくこの大王を罰せず。ただし、諸天等の御心に叶わざるは、一往は天変地夭等をもちてこれをいさむ。事過分すれば、諸天善神等、その国土を捨離し給う。もしは、この大王の戒力つき、期来って国土のほろぶることもあり。また逆罪多くにかさなれば、隣国に破らるることもあり。善悪に付いて、国は必ず王に随うものなるべし。
 世間かくのごとし、仏法もまたしかなり。仏陀すでに仏法を王法に付し給う。しかれば、たとい聖人・賢人なる智者なれども、王にしたがわざれば、仏法流布せず。あるいは後には流布すれども、始めには必ず大難来る。
 迦弐志加王は仏の滅後四百余年の王なり。健陀羅国を掌のうちににぎれり。五百の阿羅漢を帰依して婆沙論二百巻をつくらしむ。国中すべて小乗なり。その国に大乗弘めがたかりき。発舎密多羅王は五天竺を随えて仏法を失い、衆僧の頸をきる。誰の智者も叶わず。
 太宗は賢王なり。玄奘三蔵を師として法相宗を持ち給いき。誰の臣下かそむきし。この法相宗は、大乗なれども、五性各別と申して、仏教中のおおきなるわざわいと見えたり。なお外道の邪法にもすぎ、悪法なり。月支・震旦・日本、三国共にゆるさず。終に日本国にして伝教大師の御手にかかりて、この邪法止め畢わんぬ。大いなるわざわいなれども、太宗これを信仰し給いしかば、誰の人かこれをそむきし。
 真言宗と申すは、大日経・金剛頂経・蘇悉地経による。これを大日の三部と号す。玄宗皇帝の御時、善無畏三蔵・金剛智三蔵、天竺より将ち来れり。玄宗これを尊重し給うこと、天台・華厳等にもこえ