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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(192)

四条金吾殿御消息

 文永8年(ʼ71)9月21日 50歳 四条金吾

 度々の御音信、申しつくしがたく候。さてもさても、去ぬる十二日の難のとき、貴辺たつのくちまでつれさせ給い、しかのみならず、「腹を切らん」と仰せられしことこそ、不思議とも申すばかりなけれ。
 日蓮、過去に妻子・所領・眷属等の故に身命を捨てし所いくそばくかありけん。あるいは山にすて、海にすて、あるいは河、あるいはいそ等、路のほとりか。しかれども、法華経のゆえ、題目の難にあらざれば、捨てし身も蒙る難等も成仏のためならず。成仏のためならざれば、捨てし海・河も仏土にもあらざるか。
 今度、法華経の行者として流罪・死罪に及ぶ。流罪は伊東、死罪はたつのくち。相州のたつのくちこそ、日蓮が命を捨てたる処なれ。仏土におとるべしや。その故は、すでに法華経の故なるがゆえなり。経に云わく「十方の仏土の中には、ただ一乗の法のみ有り」、この意なるべきか。この経文に「一乗の法」と説き給うは、法華経のことなり。十方仏土の中には法華経より外は全くなきなり。「仏の方便の説を除く」と見えたり。もししからば、日蓮が難にあう所ごとに仏土なるべきか。娑婆世界の中