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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

(008)

法華取要抄

 文永11年(ʼ74)5月24日 53歳 富木常忍

    扶桑沙門日蓮これを述ぶ。
 夫れ以んみれば、月支西天より漢土・日本に渡来するところの経論、五千・七千余巻なり。その中の諸経論の勝劣・浅深・難易・先後は、自見に任せてこれを弁ぜんとすれば、その分に及ばず。人に随い宗に依ってこれを知らんとすれば、その義紛紕す。
 いわゆる、華厳宗云わく「一切経の中にこの経第一」。法相宗云わく「一切経の中に深密経第一」。三論宗云わく「一切経の中に般若経第一」。真言宗云わく「一切経の中に大日の三部経第一」。禅宗云わく、あるいは云わく「教内には楞伽経第一」、あるいは云わく「首楞厳経第一」、あるいは云わく「教外別伝の宗なり」。浄土宗云わく「一切経の中に浄土三部経、末法に入っては機教相応して第一」。俱舎宗・成実宗・律宗云わく「四阿含ならびに律論は仏説なり。華厳経・法華経等は仏説にあらず、外道の経なり」。あるいは云わく、あるいは云わく。
 しかるに、彼々の宗々の元祖等、杜順・智儼・法蔵・澄観、玄奘・慈恩、嘉祥・道朗、善無畏・金剛智・不空、道宣・鑑真、曇鸞・道綽・善導、達磨・慧可等なり。これらの三蔵・大師等は皆、聖人なり