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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

その時、守護の天神等、国をやぶらんことは、芭蕉の葉を大風のさき、小舟を大波のやぶらんがごとしと見えて候。
 無量義経は、始め寂滅道場より終わり般若経にいたるまでの一切経を、あるいは名を挙げ、あるいは年紀を限って、「いまだ真実を顕さず」と定めぬ。涅槃経と申すは、仏最後の御物語に、初め初成道より五十年の説教の御物語、四十余年をば無量義経のごとく邪見の経と定め、法華経をば我が主君と号し給う。中に法華経ましまして、已今当の勅宣を下し給いしかば、多宝・十方の諸仏加判ありて、各々本土にかえり給いしを、月氏の付法蔵の二十四人は、ただ小乗・権大乗を弘通して、法華経の実義を宣べ給うことなし。譬えば、日本国の行基菩薩と鑑真和尚との法華経の義を知り給いて弘通なかりしがごとし。漢土の南北の十師は、内にも仏法の勝劣を弁えず、外にも浅深に迷惑せり。また三論宗の吉蔵、華厳宗の澄観、法相宗の慈恩、これらの人々は、内にも迷い、外にも知らざりしかども、道心堅固の人々なれば、名聞をすてて天台の義に付きにき。知らず、さればこの人々は懺悔の力によって生死やはなれけん。はたまた、謗法の罪は重く懺悔の力は弱くして、阿闍世王・無垢論師等のごとく地獄にや堕ちにけん。
 善無畏三蔵・金剛智三蔵・不空三蔵等の三三蔵は、一切の真言師の申すは、「大日如来より五代六代の人々、即身成仏の根本なり」等云々。日蓮勘えて云わく、法偸みの元師なり、盗人の根本なり。これらの人々は、月氏よりは大日経・金剛頂経・蘇悉地経等を齎て来る。この経々は、華厳・般若・涅槃経等に及ばざる上、法華経に対すれば七重の下劣なり。経文に見えて赫々たり、明々たり。