『日蓮大聖人御書全集　新版』全文検索

　問う。性悪の名目は天台一家に限るべし。諸宗にはこれ無し。もし性悪を立てずんば、九界の因果をいかんが仏界の上に現ぜん。
　答う。義例に云わく「性悪、もし断ぜば」等云々。
　問う。円頓止観の証拠と一念三千の証拠に、華厳経の「心、仏および衆生、この三つは差別無し」の文を引くは、彼の経に円頓止観および一念三千を説くというか。
　答えて云わく、天台宗の人の中には、爾前の円と法華の円と同の義を存す。
　問う。六十巻の中に、前の三教の文を引いて円の義を釈せるは文を借ると心得、爾前の円の文を引いて法華の円の義を釈するをば借らずと存ずるや。もししからば、三種の止観の証文に爾前の諸経を引く中に、円頓止観の証拠に華厳の「菩薩、生死において」等の文を引けるをば、妙楽釈して云わく「還って教味を借りて、もって妙円を顕す」。この文は諸経の円の文を借ると釈するにあらずや。もししからば、「心、仏および衆生」の文を一念三千の証拠に引くことは、これを借れるにてあるべし。
　答う。当世の天台宗は華厳宗の見を出でざることを云うか。華厳宗の心は、法華と華厳とにおいて同・勝の二義を存す。同は、法華・華厳の所詮の法門はこれ同とす。勝には二義あり。古の華厳宗は、教主と対菩薩衆等の勝の義を談ず。近代の華厳宗は、華厳と法華とにおいて同・勝の二義有りと云々。その勝においてまた二義ありという。
　迹門は華厳と同・勝の二義あり。華厳の円と法華迹門の相待妙の円とは同なり。彼の円も判麤、この円も判麤の故なり。籤の二に云わく「故に、二妙を須って、もって三法を妙ならしむ。故に、諸味