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『日蓮大聖人御書全集 新版』全文検索

中間、わずかに宝塔品を説かれし時刻に仏になりたりしことは、ありがたきことなり。一代超過の法華経の御力にあらずば、いかでか、かくは候べき。されば、妙楽は「行は浅く功は深し。もって経力を顕す」とこそ書かせ給え。
 竜女は、我仏になれる経なれば、仏の御諫めなくとも、いかでか法華経の行者を捨てさせ給うべき。されば、自讃歎仏の偈には「我は大乗の教えを闡いて、苦の衆生を度脱せん」等とこそすすませさせ給いしか。竜女の誓いは、その所従の「口の宣ぶるところにあらず、心の測るところにあらず」の一切の竜畜の誓いなり。娑竭羅竜王は、竜畜の身なれども、子を念う志深かりしかば、大海第一の宝、如意宝珠をもむすめにとらせて、即身成仏の御布施にせさせつれ。この珠は直三千大千世界にかうる珠なり。
 提婆達多は、師子頰王には孫、釈迦如来には伯父たりし斛飯王の御子、阿難尊者の舎兄なり。善聞長者のむすめの腹なり。転輪聖王の御一門、南閻浮提には賤しからざる人なり。在家にましましし時は、夫妻となるべきやすだら女を悉達太子に押し取られ、宿世の敵と思いしに、出家の後に、人天大会の集まりたりし時、仏に「汝は癡人、唾を食らえる者」とのられし上、名聞利養深かりし人なれば、仏の人にもてなされしをそねみて、我が身には五法を行じて仏よりも尊げになし、鉄をのして千輻輪につけ、蛍火を集めて白毫となし、六万宝蔵・八万宝蔵を胸に浮かべ、象頭山に戒場を立てて多くの仏弟子をさそいとり、爪に毒を塗り仏の御足にぬらんと企て、蓮華比丘尼を打ち殺し、大石を放って仏の御指をあやまちぬ。