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当世の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の四衆の大酒なる者、この地獄の苦免れがたきか。大論には、酒に三十六の失をいだし、梵網経には、「酒杯をすすめる者、五百生に手なき身と生まる」ととかせ給う。人師の釈には、「みみずていの者となる」とみえたり。いわんや、酒をうりて人にあたえたる者をや。いかにいわんや、酒に水を入れてうるものをや。当世の在家の人々、この地獄の苦まぬかれがたし。
第五に大叫喚地獄とは、叫喚の下にあり。縦広前に同じ。その苦の相は、上の四つの地獄の諸の苦に十倍して重くこれをうく。寿命の長短を云わば、人間の八百歳は第五の化楽天の一日一夜なり。この天の寿八千歳なり。この天の八千歳を一日一夜として、この地獄の寿命八千歳なり。
殺生・偸盗・邪婬・飲酒の重罪の上に、妄語とてそらごとせる者、この地獄に堕つべし。当世の諸人は、たとい賢人・上人なんどいわるる人々も、妄語せざる時はありとも、妄語をせざる日はあるべからず。たとい日はありとも、月はあるべからず。たとい月はありとも、年はあるべからず。たとい年はありとも、一期生妄語せざる者はあるべからず。もししからば、当世の諸人、一人もこの地獄をまぬかれがたきか。
第六に焦熱地獄とは、大叫喚地獄の下にあり。縦広前におなじ。この地獄に種々の苦あり。もしこの地獄の豆ばかりの火を閻浮提におけらんに、一時にやけ尽きなん。いわんや、罪人の身の耎らかなることわたのごとくなるをや。この地獄の人は、前の五つの地獄の火を見ること雪のごとし。譬えば、人間の火の、薪の火よりも鉄銅の火の熱きがごとし。寿命の長短は、人間の千六百歳を第六の他化天
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(029)顕謗法抄 | 弘長2年(’62) | 41歳 |