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問うて云わく、何をもってこれを知るや。
答えて云わく、法華経の序品に華厳経の次の経を説いて云わく「もし人、苦に遭って、老・病・死を厭わば、ために涅槃を説く」。方便品に云わく「即ち波羅奈に趣く乃至五比丘のために説きぬ」。涅槃経に華厳経の次の経を定めて云わく「即ち波羅奈国において正法輪を転じて中道を宣説す」。これらの経文は、華厳経より後に阿含経を説くなり。
問うて云わく、阿含経の後に、いずれの経を説きたもうや。
答えて曰わく、方等経なり。
問うて云わく、何をもってこれを知るや。
答えて云わく、無量義経に云わく「初めに四諦を説いて乃至次に方等十二部経を説く」。涅槃経に云わく「修多羅より方等を出だす」。
問うて云わく、「方等」とは天竺の語なり、ここには大乗と云う。華厳・般若・法華・涅槃等は、皆、大乗方等なり。何ぞ独り方等部に限って方等の名を立つるや。
答えて曰わく、実には華厳・般若・法華等は、皆、方等なり。しかりといえども、今、方等部において別して方等の名を立つることは、私の義にあらず、無量義経・涅槃経の文に顕然たり。阿含の証果は一向小乗なり。次に大乗を説く。方等より已後をば皆大乗と云うといえども、大乗の始めなるが故に、初めなるによって方等部を方等と云うなり。例せば、十八界の十半は色なりといえども初めなるによって色境の名を立つるがごとし。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(023)守護国家論 | 正元元年(’59) | 38歳 |