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冬雨り、夏雪ふり、冬時に雷電辟礰あり。六月に氷・霜・雹を雨らし、赤水・黒水・青水を雨らし、土山・石山を雨らし、沙・礫・石を雨らす。江河逆さまに流れ、山を浮かべ、石を流す。かくのごとき変の時を四の難となすなり。大風万姓を吹き殺し、国土の山河・樹木、一時に滅没し、非時の大風・黒風・赤風・青風・天風・地風・火風・水風あらん。かくのごとき変を五の難となすなり。天地・国土亢陽し、炎火洞然して百草亢旱し、五穀登らず、土地赫燃して万姓滅尽せん。かくのごとき変の時を六の難となすなり。四方の賊来って国を侵し、内外の賊起こり、火賊・水賊・風賊・鬼賊あって百姓荒乱し、刀兵の劫起こらん。かくのごとき怪の時を七の難となすなり」。
大集経に云わく「もし国王有って、無量世において施・戒・慧を修すとも、我が法の滅せんを見て、捨てて擁護せずんば、かくのごとく種うるところの無量の善根ことごとく滅失して、その国当に三つの不祥のこと有るべし。一には穀貴、二には兵革、三には疫病なり。一切の善神ことごとくこれを捨離せば、その王教令すとも、人随従せず。常に隣国の侵嬈するところとならん。暴火横しまに起こり、悪風雨多く、暴水増長して人民を吹き漂わし、内外の親戚それ共に謀叛せん。その王久しからずして当に重病に遇い、寿終わるの後、大地獄の中に生ずべし乃至王のごとく、夫人・太子・大臣・城主・柱師・郡守・宰官もまたかくのごとくならん」已上。
夫れ、四経の文朗らかなり。万人誰か疑わん。しかるに、盲瞽の輩、迷惑の人、みだりに邪説を信じて正教を弁えず。故に、天下世上、諸仏・衆経において捨離の心を生じて擁護の志無し。よって、善神・聖人、国を捨て所を去る。ここをもって、悪鬼・外道、災いを成し、難を致す。
題号 | 執筆年月日 | 聖寿 | 対告衆 |
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(002)立正安国論 | 文応元年(’60)7月16日 | 39歳 | 北条時頼 |